子供のトレーニングについて ―我が家の実例(ダンス)をふまえて―

新6年生となる我が娘。保育園の年長時からダンス教室に通っています。

音楽に合わせて体を動かすことで、身体能力の各要素の発達と、調整力(身体の動きを総合的にコントロールする能力)の養成とを狙って習わせました。2012年(平成24年)度より、ダンスが中学の必修科目とされているのも理由のひとつです。

必修科目に入っているヒップホップダンスを教えてくれることと、それ以外にも幅広いジャンルのダンスが体験できることに魅力を感じ、現在の教室を選択しました。エアロビクスとヒップホップを中心に、チアだったりベリーダンス風だったりと、色々な動きをさせてもらえるのです。
専門性の高い教室でも良さはあるでしょうけれど、そこまで本格的にさせるつもりが無かったのです。本人が先々「やりたい!」と言えばやらせるか、といった程度。もちろん、今通っている教室も、上級者や競技者のクラスに行けば、エアロビクスの大会や各種コンテストに出たりするほど専門的なことも学べます。

うちの娘はそこまでする気が無いので、一般のクラスですけれど。

今回は、「ダンス教室に小学生の子供を通わせながら、パーソナルトレーニングも受けさせる必要があるのか」について、私見も交えてお示しできればと思います。

目次

概要

まずはじめに、子供のトレーニングに関する概要を紹介します。専門的な用語もありますが、子供にパーソナルトレーニングを受けさせるのなら、知っておいて損は無いと思います。

子どものためのレジスタンストレーニング

国際的なトレーナーの団体であるNSCAは、青少年を対象にしたレジスタンストレーニングに関し、以下のようなガイドラインを策定しています。

  • 有資格者による指導と管理・監督を行う
  • 安全で危険の伴わない運動環境を確実に整える
  • レジスタンストレーニングの効果と問題点を教育する
  • 各セッションは、5~10分のウォームアップから開始する
  • 多様なエクササイズを、低強度、10~15回、1セットから開始する
  • ニーズと目標に合わせて、6~15回で2~3セットまで漸進させる
  • 筋力の向上に伴い、負荷を徐々に増加させる
  • 重量よりも、適切なエクササイズテクニックを重視する
  • レジスタンストレーニングは、週2~3回、1日以上の間を空けて実施する
  • 進歩を確認するために、各自のトレーニング日誌をつける
  • トレーニングプログラムに体系的な変化をもたせ、常に新鮮で挑戦しがいのあるプログラムを作成する
    ※太字強調はじねん堂による

レジスタンストレーニングとは、いわゆる“筋トレ”のことです。少し詳しく述べれば、「筋肉に負荷(抵抗・レジスタンス)をかけて、筋パワー・筋力・筋持久力など、筋肉の機能向上を図るトレーニング手段」と、なります。
子どものレジスタンストレーニングは、大人が行うよりも軽い負荷で、そのぶん反復回数は多く、しかし全体の量は少なく、テクニック(フォーム)を重視して行うことが原則です。

ウェイトトレーニングを行うと、筋肉がつきすぎたり身体が硬くなったりするのではないかと心配される親御さんもいらっしゃるかと存じます。しかし、子どもではなかなか筋肉がつきすぎるほどのトレーニングを行うことは出来ませんし、身体の硬さに関しても、子どものトレーニングでは大きく体を動かす基本的な種目が中心となりますので、それほど心配する必要はありません。
たしかに筋力は向上しますが、モリモリ筋肉が増えるわけではなくて、ある動き(トレーニング種目)を反復することで、その動きに必要な部位の筋肉を上手に沢山動員させることができるようになり、その結果、扱う重量が増えていくといった具合です。(全く筋肥大を起こさないわけではありません)

コーディネーショントレーニング

「コーディネーション」とは、 1970年代に旧東ドイツのスポーツ運動学者が考え出した理論で、日本では「調整力」とも呼ばれています。

「センス」とか「運動神経」と言い換えると、しっくりくるかもしれませんね。

コーディネーション能力は、7つの要素(能力)から成り立っています。

その7つの要素とは、

  • リズム能力
    いわゆるリズム感。動くタイミングを上手につかむ。まさにダンス!
  • バランス能力
    バランスを正しく保つ。崩れた姿勢を立て直す。スキー、スケート、スラックライン。
  • 変換能力
    状況の変化に合わせて素早く動きを切り替える。どこへ走りこむ、どう動く、切り返し。バスケットボール、サッカー、フロアボール。
  • 反応能力
    合図に素早く反応し、適切に対応する。音や光だけでなく、触覚や筋感覚に対しても。スタートの合図、監督の指示に対する反応。相手の動きや、伝わってくる力に対する反応。柔道、レスリング。
  • 連結能力
    身体全体をスムーズに動かす。身体各部位の力加減や動かすスピードを上手く調整する。複数の動作を連続して行うときに重要。これもダンス!
  • 定位能力
    動いているものと自分の位置関係とを把握する。ボールや他の選手と自分との位置関係を把握したり、自分の動きと関連付けて調節したり。野球、アーチェリータグ、チェイスタグ。
  • 識別能力
    道具やスポーツ用具などを上手に操作する。ボールやラケットのほか、自転車のハンドルなどの操作を精密に行う。ペタンク、ボッチャ、ゲートボール。

と、定義されています。

それぞれの能力で違ったスポーツを例に挙げていますが、実際にスポーツを行っている時は、複数の能力が複雑に組み合わさることでパフォーマンスを発揮しています。特に子供の場合、筋トレよりもコーディネーションのトレーニングを重視することでパフォーマンスアップにつながるという考え方もあります。

私は両方とも大切だと思いますし、指導する際にも両方を適宜取り入れています。

パーソナルトレーニングの必要が無い事例

ここからが本題です。

私は、ダンス教室へ子供を通わせている目的によらず、基本的にパーソナルトレーニングは必要ないと考えています。
基礎的な体力要素(筋力・コーディネーション)は毎日外で遊ばせれば養えますし、ダンスに特異的な体力や技術は、ダンス教室や自主練習で身につくと思われるからです。
私の知る限り、ダンス教室ではクラス全体を見ながら、基礎的なものから徐々に高度な内容へとステップアップしながら指導しています。平均的な能力の持ち主ならば、自然とレベルが上がっていくはずです。もちろん、本人の努力が前提ですけれど。

「音楽に合わせて楽しく身体を動かせるようになれば良い」程度なら、まず必要ないでしょう。

パーソナルトレーニングを検討する3パターン

基本的にパーソナルトレーニングは必要ないと述べましたが、多人数が同時に学ぶようなダンス教室では、個々の綻びを充分に繕う余裕が無いこともまた事実。
子供のやる気如何な部分もあるとはいえ、やはり能力差は出てきてしまいます。
その結果、上手な子は目を掛けてもらえるけれど、その他大勢はそれなりで、出来ない子は隊列の後ろの方に追いやられるとか。「同じ月謝を払ってるのに!」と、不満を募らせる親御さんもあるかもしれません。発表やコンテストの日にちが決まっているなら仕方のないこととも思えます。

能力が平均よりも低位置にあったり、逆に高いところを目指したりするような場合、パーソナルトレーニングが視野に入ってくるでしょう。

そこで、パーソナルトレーニングを受けることが検討される3つのパターンを紹介します。

ついていけない

運動が苦手な子は必ずいます。
それを何とかしようと、運動教室に通わせる場合もあるでしょう。しかし、通わせれば運動能力が高まるとは、必ずしも言えないのです。

全くついていけないわけではないけれど、何となく動きに違和感がある

このような場合、筋力が不足していたり、身体の感覚と動きの統合がすこし未熟であることが原因と考えられます。
基本的な種目によるレジスタンストレーニングや、バランス能力を養成するエクササイズ。あるいはもっと根本的に、身体の力を抜いてリラックスするためのワークなどにより改善を期待できます。事例紹介にある「子供の姿勢改善」も、考え方は同じです。我々パーソナルトレーナーの出番といえます。

ところが、立つ・歩く・跳ぶなど、基本的な身体の使い方が未熟でダンスをするどころではないような場合は、少し対応が違ってきます。いわゆる全然ついていけない状態です。
これがあまりに顕著だと、もしかしたら発達障害のひとつである「発達性協調運動障害」の疑いも浮上してきます。
「発達障害にはダンスが良い」とも聞きますが、それは健常者と一緒のグループでダンスを行うのが良いのではありません。いわゆる療育(運動療育?)の領域。一般的なダンス教室よりも専門的で細やかな対応が望まれるのです。

パーソナルトレーニングの検討対象ではありますが、じねん堂では対応しかねる事例かも知れません。

どうしても苦手な動きがある

レッスンには基本的についていけるのだけれど、なかなか上手くできない動作がある場合は、スポット的にパーソナルトレーニングを受けてみるのも良いでしょう。

例えばダンスを習い始めたころの娘は「足を開いて立った状態から→ジャンプして90度方向を変え→足を揃えて着地」という動きがなかなかできず、特に“空中で90度方向を変える感覚”がつかめないようでした。
そこで床にテープで目印をつけ、先ずは目で確認しながらゆっくり。次いで、目で確認しながら一定のリズムで(メトロノーム使用)。

そこからだんだんテンポを速めていったり、足元を確認せずに行ったりなどして難易度を上げ、最期は一連の振り付けの中で問題の動作をするところまで進めました。

このように、足元なり、視線の先なりに目印を置いてやることで、苦手な動作を克服できることも多いです。
逆に、部分的な要素に注目した方が効果の出やすい場合もあります。アイソレーションといって、身体の各部位を単独で動かす訓練を行うのです。アイソレーションによって身体各部位のイメージやそれをコントロールする感覚を養い、次に各動作の統合を行うことで、よりスムーズな動きを獲得します。

このあたりはじねん堂の得意とするところです。

少しでも“上”を目指すために!

クラスの中でもっと上位に。上のクラスで通用するように。本人がそれを望むこともあれば、ただただ親の願望なこともあるでしょう。

前段の内容に、よりボディイメージや瞬発力を高める要素を加えていくことになると思います。

パーソナルトレーニングにありがちなエラー

トレーニングを続けているうち、ダンスをしている姿が、「元気は良いのだけど、どうも“走り”がちだなぁ…。」と、感じられるようになるかもしれません。あるいは、ぶんぶん手足を振り回すような身体の使い方が目立ってくるとか。

コーディネーションを重視せず、筋力トレーニングやバランストレーニングに偏重してしまったときに表出しがちなエラーであると、私は考えています。
これらの現象は、動いているうちに徐々に修正されてくるものですが、修正されない場合はこちらからの働きかけを行います。本来なら、症状が顕著にならないよう、最初からリズム能力や連結能力にも目を向けて導いてあげるべきところです。
トレーニングをしていなくとも、本人の意識変化や体力の向上によってこのような現象は起こり得ます。上手な子は、こちらから何ら働きかけをせずとも修正できてしまう(修正している意識すらない)と思われますが、そうでない子はスポット的なパーソナルトレーニングの検討対象となります。

因みに、じねん堂では時々ミット打ちを取り入れています。もちろん、音楽を流して、リズム良く行います。拍でミットを捉えるといった具合です。ミットに手や足が当たった時の音や触覚などを頼りに、頭と身体の統合を図ろうという魂胆です。一般的なパンチやキックだけでなく、様々な部位をミットに当てたり軌道を変えたりといった工夫もします。

直近の我が家

先日、娘のダンスの発表を見てきました。

上手な子達よりは明らかに“キレ”がなくて、いつものごとく拍を外さずに振りをなぞる感じではあったのですが、いつもと大きく違う部分もありました。

それは、動きに緩急があったこと。

ビシッ、バシッと“キめる”わけではないものの、要所要所、可愛い感じのポーズで少し“溜める”動作が印象的でした。
ひらひらと動いては溜めて、当然次の動作の起こりは遅れるのだけど拍は外さず。転調して激しくなる部分はそれなりに。
今回は曲がK-Popだったので、なおさらマッチしていたように思います。可愛さにステータスを全振りしたとでも言いましょうか。非常に驚かされました。

そういえば、店のトレーニングルームで自主練している様子を見た時、「キレの無い動きでふにゃふにゃやってるなぁ…。」と、感じたあの姿。
実は、首の傾げ方、腕の上げ方、腰の角度、そして表情など、鏡に全身を映しながら研究していたのですね。
それが苦肉の策だったとしても、あるいは自分の特性を見出したのだとしても、こういったアプローチ・見せ方もありなんだと、娘に教えられた次第です。

ダンスを習った当初から、力強さは無くとも手先足先に気の入った身体の使い方をしていましたし、ノルディックウォーキングのフォームも私よりずっときれいですから、こういったタイプの身体操作が得意なのだと思います。

動きの“キレ”ばかりに注目して、その不足を稽古量で何とか補えないかとか、場合によっては再びトレーニングによる介入が必要かとか、ついつい口出ししてしまいそうになっていたのですが、今の彼女には必要ないことなのかもしれません。

まとめ

長くなったので簡単にまとめますと、じねん堂ではダンスをしている小学生のトレーニングに関して、

  • 基本的には不要
  • クラスについていけないほど動けないなら必要なことがある
  • 上を目指すのなら必要かも
  • 筋肉や身体を上手く使えるようになる働きかけを!

と、考えています。

お子さん自身がどうなりたいのか、親御さんは子供にどこを目指してほしいのか、そしてそれらは現実的なものなのか。話し合ってトレーニング方針を決めることになるでしょう。

我が家の場合は、基本的には見守りつつ、「動きができない場合だけ少し介入」して今に至っています。

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