短い怪異談詰め合わせ③

赤い絵

 看護師さんからいただいた話。
 入院患者のお婆さんから、病室を替えるよう強い希望があった。物が上から落ちてくるとか、赤い絵が掛けてあるとかいった理由だった。幽霊も見えるという。しかし、病室の高いところには何も置いていないし、もちろん赤い絵なぞ掛けていない。幽霊のことも含めて譫妄(せんもう)かなと思いつつ、希望通りに部屋を替え、ご家族に経緯を説明すると、
「ああ、うちの婆ちゃん、めっちゃ霊感あるから」
とのことだった。
 そこで初めて、看護師さんはゾッとしたのだという。

譫妄:入院中の様々なストレスが原因となって、意識が混濁したり認知機能が低下したり、時には幻覚や妄想といった症状が出たりする状態

1歳児クラス

 2023年。保育士のKさんの仕事始めは1月4日だった。
 担当の1歳児クラスに入ると、先に出勤していた職員と3人の園児が床に座っていたのだが、園児たちの姿を見て違和感を覚えた。3人が3人とも天井の同じ場所を見て手を振っているのだ。虫でも飛んでいるのかと思っていると、園児の1人が、「じいじ」と天井に向かって呼び掛けだし、違和感は恐怖に変わった。
 Kさんは知らなかったが、この教室では園児が虚空を見つめることが度々あり、“いるらしい”とは言われていたそうだ。

平家の里

 40代の女性、Tさんの体験談。
 友人たちとの外出からの帰路、平家の里キャンプ場付近を走っていると、知った道のはずなのに同じ場所をぐるぐる回ってしまっているようで、何度も赤い橋のある道に出てしまう状態に陥った。半ばパニックになりながらも、いつの間にかループを抜け出して帰宅できたのだが、帰るや否や母親に
「川でたくさん死んだようなところに行かんかったか!?」
と、背中をバシバシと強く叩かれた。
 Tさんは母親の剣幕に驚き泣きながら、分からないと答えることしかできなかった。
 Tさんの母親はヤタガラスの家紋で知られる豪族の熊野三党をルーツに持つ。熊野三党と言えば神職の家系でもあり、そのおかげなのか霊的な事象に敏感とのことだった。

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