赤い絵
看護師さんからいただいた話。
入院患者のお婆さんから、病室を替えるよう強い希望があった。物が上から落ちてくるとか、赤い絵が掛けてあるとかいった理由だった。幽霊も見えるという。しかし、病室の高いところには何も置いていないし、もちろん赤い絵なぞ掛けていない。幽霊のことも含めて譫妄(せんもう)かなと思いつつ、希望通りに部屋を替え、ご家族に経緯を説明すると、
「ああ、うちの婆ちゃん、めっちゃ霊感あるから」
とのことだった。
そこで初めて、看護師さんはゾッとしたのだという。
1歳児クラス
2023年。保育士のKさんの仕事始めは1月4日だった。
担当の1歳児クラスに入ると、先に出勤していた職員と3人の園児が床に座っていたのだが、園児たちの姿を見て違和感を覚えた。3人が3人とも天井の同じ場所を見て手を振っているのだ。虫でも飛んでいるのかと思っていると、園児の1人が、「じいじ」と天井に向かって呼び掛けだし、違和感は恐怖に変わった。
Kさんは知らなかったが、この教室では園児が虚空を見つめることが度々あり、“いるらしい”とは言われていたそうだ。
平家の里
40代の女性、Tさんの体験談。
友人たちとの外出からの帰路、平家の里キャンプ場付近を走っていると、知った道のはずなのに同じ場所をぐるぐる回ってしまっているようで、何度も赤い橋のある道に出てしまう状態に陥った。半ばパニックになりながらも、いつの間にかループを抜け出して帰宅できたのだが、帰るや否や母親に
「川でたくさん死んだようなところに行かんかったか!?」
と、背中をバシバシと強く叩かれた。
Tさんは母親の剣幕に驚き泣きながら、分からないと答えることしかできなかった。
Tさんの母親はヤタガラスの家紋で知られる豪族の熊野三党をルーツに持つ。熊野三党と言えば神職の家系でもあり、そのおかげなのか霊的な事象に敏感とのことだった。
友人のアパート
Nさんという30代の女性が学生時代に友人宅でお泊り会をしたときのこと。
1Kのアパートのベッドに2人で就寝したのだが、しばらくすると壁側に寝ていた友人が
「音がする」
「お風呂に子供がいない?」
などと言い出した。たしかに壁の向こうはユニットバスだが、自分には何の音も聞こえない。そのことを友人に伝えても答えが返ってこなので、寝ぼけているのだと思い、自分も眠りについた。翌朝、友人に音の件を聞いても案の定覚えてはいなかった。やはり寝ぼけていたのだと、Nさんは納得した。
しかしその日を境に、この友人宅で宿泊すると金縛りにあうようになった。一方で、友人には何も起こらない。一連の出来事は、霊的な存在が自分に何かを知らせようとしていたのかもしれないと、Nさんは今になって思うのだという。
ごんじゃ
30年から40年前の話。Iさんの実家が所有する山は美杉の山師が手入れをしていた。その山師いわく、美杉の山には「ごんじゃ」というぴょんぴょん飛び跳ねる短い蛇がいて、目が合ったら決して自分から外してはならないのだそうだ。もし目を外したら、死んでしまうのだとか。
「ごんじゃ」は権蛇と書くのだろうか。美杉に隣接した伊賀市には権蛇という苗字があり、全国的にみても伊賀市に多い。何か関係がありそうに思える。
「ごんじゃ」の見た目や動きはツチノコのようだ。ツチノコと言えば、松阪でも目撃談がある。もしかしたら三重県には広くツチノコが生息しているのかもしれない。