似ているようでちょとずつ違う「ひとだま」のはなし

おばけ、幽霊といえば、「ひとだま」がつきものである。

墓地の上にフワフワ浮いているイメージだろうか。

今回はそんな「ひとだま」について。ちょっと毛色の違う、しかし共通点のあるお話を紹介できればと思う。

松阪市でのできごと

Tさんのお母様の体験談。

10年以上前、親類の葬儀に参列した時のこと。

葬儀には地方や宗派によっていろいろなスタイルがあるわけだが、この地域では自宅でお経をあげたあと、寺へ骨を納めにいく手順だった。

自宅での儀式の後、参列者が寺に向かう準備をしていると、

「おい。あれ、見てみい!」

家の屋根のあたりから現れた火の玉が、しばらくその場に静止した後、ビューンと寺の方に飛んでいった

Tさんのお母様だけでなく、その場にいた参列者皆が目撃して騒然となったそうだ。

明和町でのできごと

30年ほど前、親戚筋のイズミさんが葬儀に参列した際に目撃した現象。

このときの葬儀は、寺でお経をあげたあとに少し離れたところにある墓まで骨を納めに行くスタイルだった。行列を作って、各々が傘やら米やら色々な道具を持って歩いていくのだ。

この日の葬儀も通常通りに寺でお経をあげ、墓へ行く行列の準備をしていたときである。

寺の屋根のあたりから光のスジがビュッと墓の方へ飛んでいくのを、その場にいた何人かが目の当たりにした。

「あれは、ひとだまやで。」

イズミさんは興奮気味に話してくれた。

美杉町でのできごと

誰かから聞いた話ではないが、先般も紹介した「美杉村のはなし」に収録された民話にもひとだまの話がある。

人だま

昭和10年ごろのことであった。

丹生俣のお薬師さんの近くに指物師を生業にしている人があった。

ある夜、夜なべをしていると、唐戸に住む知り合いが青くなって駆け込んできた。

「で、出たッ!」

知り合いは、歯の根をガチガチ鳴らしていった。

「出たて、何が?」

指物師が聞くと、

「たった今、なかやりの○○さんの家から人だまが出た。青い火が尾を引きながら、ふわふわとこの家の上を通って寺に飛んで行ったが、あんた見なかったか?」

知人はそういって、からだをぶるぶるっと震わせた。

人だまが出た家には、肺を患って長いこと休んでいる人があったが、それからじきに亡くなった。

人だまは、人死ぬ少し前に飛ぶのだそうな。

ちょっとずつ違うけれど、似ている…

松阪と明和のひとだま(火の玉)は死んだ後。美杉のひとだまは死ぬすこし前に現れている。しかも前者はまっしぐらに飛んでいくようなスピード感があり、後者は “ふわふわ” というのだから、かなり印象が違う。

しかしいずれの場合も、“次に儀式がある場所” を先取りするように飛んでいくという共通点があって興味深い。県内のそれぞれ別の場所で別の時期に、(松阪と明和の件は特に)似通った現象を複数人が目撃しているのこと考えると、ひとだまが本当に存在するのではと思わずにはいられない。

ひとだまの正体を、土葬された遺体から発生する各種の可燃性ガスや、発光性の生物とする説がある。しかし、松阪と明和の事例に関していえば、いずれにも当てはまらないように思える。ガスが発生する状況であるとは考えにくいし、現象の発生が日中なので “発光性の生物” の活動する時間ではない。そもそも発光性の生物が発する程度の光量では陽光が強すぎて視認できないだろう。(美杉の件は夜であり、フワフワ飛んでいることから、何らかの生物の可能性もある)

ロマンのある話だ。

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