子供部屋

Kさんが結婚する前、A県の実家にお住まいだったころ。

小学校2年か3年のある時から、2階の自室にある机で勉強していると、お経のような音が聞こえてくるようになった。昼夜は問わないのだが、必ず机で勉強している時である。
姉や母親にこのことを伝えても、そのような音が聞こえたことは無いと言う。姉に関しては隣の部屋なので聞こえないはずはないのだが、不思議なこともあるのだなと感じていた。

そうこうしているうちに、お経は聞こえなくなった。

お経が聞こえなくなったのを境に、毎日ではないが、ベッドで寝ていると金縛りにあうようになった。そして、金縛りになるときまって、1階から誰かが階段を上がってくる気配がし、部屋に入ってきたソレがベッドの横に立っていると分かる。
しかしなぜか怖いとは感じず、
「お姉ちゃんが漫画本を取りに来たのかな……」
そう思っていた。

そんな金縛りも、犬を飼い始めたらすっかり起こらなくなった。

成長し、家を出て暮らすようになってからも、(犬は飼っていないが)気配を感じたり金縛りに見舞われたりはしなかった。
「子供特有の思い込みみたいなものだったのかな」
いつしか自分の中で整理をつけていた。

やがてKさんは結婚し、隣県に引っ越すことになった。
嫁ぎ先の2階の一部屋が夫婦の居室として充てがわれ、タンスなどの家具や荷物を運びこんでいる時のことだった。
「仏壇の上には家具を置いたらあかんよ」
義母に注意された。
仏間の上の部屋を使用する際は、仏壇の直上にあたるスペースには家具を置かないのが習わしなのだと言う。

この話を聞いて、Kさんは子供のころの体験を思い出した。

そういえば、お経が金縛りに変わったのは、部屋の模様替えをしたタイミングだった。机も、ベッドも、現象が起きた時期には仏壇の上に位置していたのだ。
「それでか……」
Kさんは妙に納得したのだった。

では、なぜ犬を飼ったら現象が起こらなくなったのか。
その理由は未だ、分かっていないのだそうだ。

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