三重県津市のじねん堂です。
先般、アルパカストーブの塗装について報告したところ…
ストーブの後ろの波板は何?
と、質問を受けました。
これはほかでもない、遮熱板です。
昨年の今頃DIYしたもので、余所のブログに製作過程を書いているのですが、せっかく質問していただいたので、こちらにも軽く紹介したいと存じます。
製作まで
昨年の12月。玄関ホールに石油ストーブ(対流型ストーブ)を設置しようと思い立ちました。
製品の取説を読むと、壁とは1.5メートル離さなければならないとのこと。
しかしうちの場合、スペースの関係で、どうしても壁に寄せる必要があります。ですから、ストーブと壁との間に遮熱板を立ててみてはと思ったのです。
とはいえ、既製品の遮熱板は結構なお値段なのです。楽天で見ると、数万円のものばかり。
見た目も真っ黒なで、うちの玄関ホールには合わなさそう。
そうなってくると、方法はひとつ。
得意のDIYです。
大原則があるらしい
作るとなれば、ある程度仕組みを理解しておかねばということで調べたところ、遮熱板には一つの原則があると分かりました。
それは、遮熱板と壁との距離が2.5センチ以上必要ということ。
ストーブからの熱(輻射熱)は光や電波と同じで、何かに遮られると前に進むことができなくなってしまいます。熱の場合は不燃材で遮るのですが、今度は不燃材自体も発熱してきてしまうので、空気の層と、そこに生まれる対流(空気の流れ)によって熱を逃がしてやるというのです。これに必要なスペースが2.5センチ以上というわけです。
遮熱板と壁とが離れていないと、すぐに燃えはしなくとも壁の裏の木材が極度に乾燥したり炭化したりして、時には100℃を下回る温度で発火してしまうこともあるそうです。(低温発火)
家のローンはまだまだ残っているので、これだけは避けたいです。
素材はどうする?
遮熱板の素材についても、いくつか候補のあることが分かり、検討しました。
耐熱レンガ
最初は耐熱レンガで組もうと考えていました。しかし、意外に場所をとるし、費用もかさむし、ただ積み重ねるだけだと崩れた時に危ないので却下。
レンガは暖房器具に使われるほど蓄熱する性質がありますから、2.5センチあければ大丈夫と言われていても何となく不安というのも理由のひとつです。
断熱ボード
次に考えたのが家の壁にも使う断熱ボード。バーナーで表面を熱しても裏側は冷え冷えなCMを見た覚えがありませんか?
これを適当な大きさに切って、脚をつけて立てておけば万事解決なのですが……。
これも見栄えがよろしくない。味気ないのです。
金属の板
もうひとつ思いついたのは金属の板。
薪ストーブ用の遮熱板も鉄板です。
コンロ回りやエンジン・マフラーには光沢のある金属板が使用されています。光沢があれば熱を反射してくれそうです。
アルミの板も良いですけれど、お金をケチるなら金属製の波板で良いかもしれません。見栄えも良さそう(好み)です。
ただ、問題は厚さ。
波板だけでは薄すぎて、自立できません。
素材決定
検討した結果、断熱ボードであるケイカル板(ケイ酸カルシウム板)にガルバリウム鋼板の波板を貼り付けることにしました。
単体でないのは見栄えを良くするためと、ちょっとしたアイデアを実行するため。このアイデアが今回の工作のメインテーマでもあります。
製作の模様
材料の調達
ケイカル板をカットしてくれる販売店を見つけた(⇒工作素材の専門店!FRP素材屋さん)ので、こちらで注文しました。
本体よりも送料の方が高くついたのですが、届いた荷物の厳重な梱包を見て妙に納得。
輸送中に割れないための配慮なのだと思います。ありがたいことです。
もうひとつの材料であるガルバリウム鋼板の波板は、近所のコメリで購入しました。6尺で840円。リーズナブルです。
波板は、インターネット通販で切り売りしてくれるところもあるようです(⇒建材ステーション)。手間をかけたくない人はこっちの方が良いかもしれません。
いざ工作
材料が揃ったら工作にかかります。
まずは波板をグラインダーでカット。
火花が飛ぶので、珍しく長袖長ズボンです。
頭の中で Judas Priest の Grinder が流れていたことは言うまでもありません。
カットしたらケイカル板と重ねて穴をあけていきます。
こんな感じで、5か所に穴をあけました。
さあ、ここからが今回製作する遮熱板の “ミソ” 。工夫の部分です。
ケイカル板と波板の間に2.5センチのスペーサーを咬ませてボルト固定しました。
波板で熱を受け(反射?)、ケイカル板との間で対流を起こすのが狙い。
家屋の壁を利用せず、遮熱板一枚(遮熱装置一式?)で完結させようという魂胆なのです。
クランプを脚代わりに装着して完成!
ちなみに、スペーサーやクランプなどは近所のコメリで購入しました。
さっそく設置です。
想像通りの出来に大満足です。
理屈はこんな感じ。
もちろん予定通りに壁は冷え冷えです。
安価で製作も簡単な遮熱板。
壁際にストーブを設置しなければならない時にはぜひお試しください。
後日談
その後、遮熱板そのものの性能は問題なかったのですが、遮熱板より上の壁が熱くなるという問題が発生しました。
遮熱板のサイズは幅50センチ×高さ70センチ。そのさらに20センチほど高い部分の温度が最も高く感じました。
手を当てていても平気な程度なので、大したことは無いかもしれませんが、一応温度を測ってみると……
59.7℃と出ました。
ダウンライト等の照明器具が建材に接する部分の温度には「上限60℃」というメーカーの自主規制があるそうです。その付近の温度なので大丈夫だろうとは思いますが、完全には拭い切れない不安が残ります。
念のため、ケイカル板の端材で断熱することにしました。
せっかくの“スタイリッシュ遮熱板”が台無しです。
遮熱板の高さは、石油ストーブ(対流型ストーブ)の1.5倍ほどが望ましいのかもしれません。
【参考】
木材の長期低温加熱による出火危険性について(消防科学研究所報 昭和61年-第23号)