【解釈】えんとつ掃除とゴミ男

映画が話題となっている“煙突の町”の絵本。

私も挿絵、特に背景の魅力に取りつかれたひとりだ。陰鬱な解釈ができる内容も好みに合っている。

しかし、どうにも文章が読みにくい。数年前には、次男の夜伽に使うために少しだけ作り直したこともある。

今回は私の解釈で少しだけ作り直した煙突の町の物語を紹介したい。

 

「えんとつ掃除とゴミ男」

 

周りを崖にかこまれて

世界を知らぬ街があり

越えようにも越えられぬ

崖の高さは1千里

 

えんとつだらけのその町は

朝から晩までモックモク

そこかしこから登る煙

空を仰げばモックモク

 

えんとつの町に住むひとは

青いお空を知りませぬ

くろい煙に囲われて

かがやく星を知りませぬ

 

世界を知らぬこの町に

不憫な子供がおりました

漁師だった父親を

海で亡くしておりました

 

母と暮らす少年は

まいにちまいにち煙突掃除

父の形見のペンダント

失くせど今日も煙突掃除

 

 

ハロウィン祭りの日、少年は奇妙な男と出会いました。

男の頭は傘、顔は植木鉢、髪はコード、手は箒、胴体や足も色々なゴミで出来ていて、臭いけれどどこか懐かしい、そんなにおいがしました。

他の子供たちがゴミ男を敬遠するなか、少年は彼と親しくなります。

少年のやさしい母親も、少年とゴミ男との交流を諌めはしません。

 

父親が海で死んだこと、形見のペンダントをドブに落として失ったこと、そして、町の煙の上には星空が広がっていると父親から聞いたこと。

少年はゴミ男に話しました。

「誰一人信じてはくれないけれど、1人になっても信じ抜けば、星を見ることができる。」

黒い空を見上げて少年は言うのでした。

 

翌日、身体を洗ってやったにもかかわらず、ゴミ男の臭いは元に戻っていました。

少年が無くしたペンダントをさがしてドブさらいをしていることが原因のひとつでしたが、少年には知る由もありません。

ゴミ男はその不潔さによって、町の子供たちから暴行を受けることになります。

少年も、町の子供たちの言うまま、ゴミ男から距離を置きます。

ゴミ男はますます臭気を増し、身体もボロボロになっていくのでした。

 

ある寒い夜、ゴミ男が再び少年の元を訪ねてきました。

変わり果てた姿のゴミ男を見捨てることができず、少年は誘われるまま浜辺へ向かいました。

ゴミ男はうち捨てられた船に風船を括り付け始めます。

煙の上まで星を見に行くと言うのです。

 

沢山の風船をつけた船はふわりと浮かび上がり、どんどん昇っていきました。

 

そして町の空を覆う煙を抜けた上にあったのは…。

少年が信じて疑わなかった満天の星空と、大きな月でした。

父親の言っていたことは本当だったのです!

 

ここで、ゴミ男は告白します。

父親の形見のペンダントのありかを。

それは、ゴミ男の頭の中にあったのです。

最初から。ゴミ男の“脳みそ”として。

 

少年は悟ります。

父親がゴミ男に化身して、ハロウィン祭りの日に帰ってきてくれたのだと。

 

それからゴミ男と少年と母親は、煙突の町で3人仲良く暮らしたそうです。

 

めでたしめでたし。

 

 

…でもね。

 

 

本当は、ゴミ男も母親も、もちろん父親も、煙突の町にはいないのです。

 

父親が死んだあと、もともと体の弱かった母親は、床に臥せる日が多くなってしまいました。

そして半年後、夫の後を追うように、母親もこの世を去っていたのです。

葬式を出す金のない少年は、母の亡骸をベッドに寝かせておくことしかできません。

いつかきちんと葬ってやろうと、煙突掃除で日銭を稼ぐ日々でした。

 

しかし不憫な少年も、ハロウィン祭りの日に死んでしまいました。

煙突から足を滑らせて、身体を強く打ちつけて。

 

こと切れるまでのほんの少しの時間に、少年は幻を見たのです。

 

ゴミ男と、やさしい母と、恋しい父とを。

 

崩れていく母親の身体と強くなる臭気とが、ゴミ男と重なります。

世話をしたり、距離を置いたり、見捨てられなかったり。母の遺体と少年との関係が想起されます。

もしかしたら少年は、身体に染みついた腐敗臭が原因で、町の子供たちから虐められていたのかもしれません。

 

やがて、「時間が無い。」と、ゴミ男に浜へ連れ出される少年。

少年の命は尽きようとしていました。

 

最期のとき、少年はゴミ男が父の化身であると確信するに至ります。

ゴミ男は父であり、母であり、少年でもあったのです。

 

信じて疑わなかった星空を、父と共にみることができた少年は、きっと浮かばれたのでしょう。

 

それが死にゆく目に映るハロウィン祭りの町の明かりだったとしても。

 

 

周りを崖にかこまれて

世界を知らぬ街があり

越えようにも越えられぬ

崖の高さは1千里

 

えんとつだらけのその町は

朝から晩までモックモク

そこかしこから登る煙

空を仰げばモックモク

 

えんとつの町に住むひとは

青いお空を知りませぬ

くろい煙に囲われて

かがやく星を知りませぬ

 

世界を知らぬこの町に

不憫な子供がおりました

煙突から足を滑らせて

死んだみなしごおりました。

 

こと切れるまでの数瞬に

祭りの明かりがみえました

空飛ぶ船でくものうえ

星や月にみえました

 

あると信じて疑わぬ

星や月に見えました

 

 

 個人的には、マッチ売りの少女のような切ない物語だと思う。

残念ながら当時の次男には全く響かず、それっきり「おはなし」をすることは無かったが、話題になっているこの機会にまた話して聞かせてみようと考えている。 

クライマックスの暗喩

 

※2017年にミエワンブログで公開したものに加筆修正しました

※作家個人やその信奉者を誹謗する意図はありません 

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