おんなのしろいあし
じねん堂では、季節によって待合室の本棚に並べる本を変えている。
夏は毎年「怖い本」にしていて、そのなかでも来院者から好評なのが、怪談えほんシリーズである。
「え。この人、絵本も書くの!?」
そう言って手に取られる方が多い印象だ。
岩井志摩子作の「おんなのしろいあし」もそのうちの一冊。
ものすごく簡単に紹介すると、「強がってみたら怖い目に遭った」というお話。
こちらの動画では、作者の岩井志摩子さんが元ネタと思しきエピソードを語っていらっしゃる。
息子さんのお話で、歌舞伎町が舞台だったようだ。
話の筋(すじ)は同じでも、絵本とは大分印象が異なっていて面白い。
足といえば
足といえば、こんな話がある。
Tさん(女性)の体験談だ。
ある晩、Tさんは友人と食事にでかけた。
友人の実家が経営する工場の従業員駐車場に車を停めて、友人の車に乗って。
食事会はとても楽しく、友人と別れて駐車場に戻ってきたときには、夜も遅くなっていた。
そこそこの広さで砂利敷きの駐車場。周りには街頭も少なく、夜遅いこともあって何となく不気味な感じがした。
「早く家に帰ろう。」
足早に車に近づき、乗り込もうとしたのだが、なぜかリモコン式の鍵がなかなか開かない。
そのうちクラクションがけたたましく鳴りだしてしまった。恥ずかしいやら焦るやらでガチャガチャやっているうちに、なんとかクラクションが鳴りやみ鍵も開いたので、運転席に腰かけ、エンジンをかけた。
そこで、ふと敷地の外に目を向けると
「え!?」
街頭の光に照らされて、目の端に男の子の太ももから下が見えた。
敷地の外から、工場の方を向いて立っている。半ズボンをはいた男の子の足。
ゾゾッといっきに怖気(おぞけ)がつく。
ほんの一瞬見えただけだけれど、男の子だということは分かって、でももう一度確認するのも怖くて…。
Tさんは一目散に駐車場から逃げ出したのだった。
クラクションが鳴りやまなくなったのはセキュリティアラームと思われる。
リモコンキーで開錠するタイプの車なら、鍵穴に物理キーを突っ込むとアラームが作動するし、バッテリーの電圧が低くても誤作動を起こすことがある。鍵が開かない状態でドアノブをガチャガチャやっていても作動するだろう。
もしかしたらリモコンキーの電池が少なくなっていて、ガチャガチャしているうちにアラームが作動し、しつこくリモコンを操作していたら開錠&アラーム停止となったのかもしれない。この可能性がいちばん高いのではなかろうか。
そう思ってTさんに確認ししてみた。
すると、リモコンキーはその後も問題無く使えたし、車のバッテリーに関しても、上がってしまったり整備の際に指摘されたりした記憶はないとのことだった。もちろん物理キーを鍵穴に突っ込んでもいない。
なぜリモコンキーがその時だけ不調になったのか、なぜ男の子がそこに立っていたのか。
不思議な話である。