放送事故

じねん堂がまだ整骨院の中で間借りをしていた頃の話。

 

その日は空手の稽古日だった。21時半までの稽古を終えてアパートに戻り、シャワーを浴びて、テレビのニュース番組を観ようとビール片手にリモコンを操作した。

どうやら日中に交通事故からの車両火災があったようで、テレビには消火作業が終わったばかりであろう車の周りを消防士だか警察官だかがせわしなく動き回る様子が映し出されていた。

ガラス類は全て割れていて、さらに事故車はグラスルーフだったのだろうか。車内には日の光が差し込み、はっきりと焼け焦げた構造物を見ることができた。

そこで私は息を飲んだ。

フレームだけになったシートに、真っ黒になった人らしきものが座っているのだ。

まさかと思って目を凝らしてみても、いわゆる拳闘家姿勢。間違いなく焼死体だった。

「うわ、完全に放送事故やん!」

えらいものを見たとインターネットで放送事故を検索しても、まさに今起こっていることなのでヒットするはずもない。

早く誰かにこの発見を話したい。そう思いながら、眠りに就いた。

 

かくして翌日。

さっそく整骨院のスタッフや担当する患者に、

「昨日のニュース、車が炎上したやつ観ました?」

投げかけて回った。不謹慎にもウキウキだ。

ところが、

「そんなんありました?」

「いやー、知らんなあ。」

「その番組は見たけど…。」

誰も放送事故のことに気づいていないのだ。そればかりか、自動車が炎上したニュースすら知らないという人ばかり。

結局その日、誰とも話題を共有することなく仕事が終わってしまった。

 

何となく釈然としない思いで家に帰った私は、

「いやー、昨日の事故のことさ、誰も知らんだわ。」

妻に今日の意外な結末を報告した。

すると思わぬ答えが返ってきた。

「え。なにそれ?」

昨夜一緒だった妻でさえも覚えがないと言うのだ。

配偶者に無関心なのにもほどがある。半ば呆れながら証拠を見せようとネット検索をするも、該当記事は見つからない。そういえばと、ネット掲示板の “ニュース実況ch” を探すも見つからず。

後日何度か調べてみても、やはり該当する話題は無かった。

 

私はいったい何を見たのだろうと、今だに不思議に感じている。

 

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