60代後半~70代と思しき男性、Aさんから伺った話。
Aさんが現役の会社員だったころ、所属する部署に女性の新人が配属された。
彼女は美人で人当たりも良く、部署で一番年下ということも手伝ってか、皆に話しかけられ、可愛がられ、すぐに部署のマドンナ的存在となった。
しかし、Aさんはそれほどお近づきになろうとは思えなかったそうだ。
それは、“見える質”の人間として、気になることがあったからに他ならない。
彼女の左肩と右足の周りに纏わりつく、靄(もや)のようなものが見えたのだ。
目を凝らすと、それは子供だった。
左肩と、
右足に、
いわゆる水子の霊が憑いていた。
「ちょっと大きかったもんでさ、気になってな」
Aさんは言った。
「巨大な水子の霊ってことですか?」
“大きさ”の意味が分からず、私は聞き返した。
するとAさんは、水子の霊に関する自身の見解を教えてくれた。
そもそも水子の霊は、いつまでも憑いているものではないそうだ。通常は、憑いてもすぐに取れてしまう。
ただそれは、母体や胎児に生じたどうしようもない・防ぎようのない理由で胎児が命を落とした場合に限る。
逆に、それ以外の理由、たとえば親の身勝手な事情で命を奪われた水子は、念の強さから憑いてしまうとなかなか取れにくい(水子自身の恨みの念なのか親の後悔の念なのかは分からない)。しかも、憑いている間に相手の生気を吸って、生きた人間と同じように成長してしまうのだ。成長することで水子の霊も強くなり、さらに取れにくくなる。
Aさんが気になった“大きさ”とは、胎児の状態から幼児に成長した姿のことを言っていたわけだ。
「そんな娘には見えやんかったんやけどな。早く取れたらエエのになぁって、思っとったんさ」
新人さんの憑きものは取れたのだろうか。