隣人

20代の女性、Sさんが数年前に体験した話。

 

当時Sさんは接客を伴う飲食店でアルバイトをしていて、1DKのアパートに一暮らしだった。  

その日は腹痛などの体調不良を理由にアルバイトを休むつもりで、夕方までごろごろしていた。

“ピンポンピンポンピンポン”

インターホンが立て続けに鳴った。

「…はーぃ」

いつもなら無視するところだが、体調不良のせいで頭が回らなかったのか、あるいはインターホンを押す勢いにつられてか、つい返事をしてしまった。

重たい身体を引きずるように玄関へ向かい、スコープを覗くと、見たことのないおばちゃんがいた。

チェーンをかけたまま少しドアを開けて応対する。

「助けてください! 隣の人が倒れてるの!」

まくし立てるように話しながら、なぜか部屋に入ってこようとするおばちゃんを制し、部屋着のまま表に出た。大変なことが起こっているのは分かるのだが、なぜか不信感が先んじる。

“隣の人って、そういえば見たことないな。って言うか、このおばちゃん誰? 隣の部屋の人なん? でもそうやったら「隣の部屋の者です」って、言うよな…”

「あの、どうしたんですか?」

「倒れてるんです。とにかく、来てください」

“倒れているのならすぐに救急車を呼べば良いのに。なんでうちに来るんやろ…”

 

「開けて。入って!」

促されるまま隣の部屋の玄関のドアを開けた。

途端に、明らかな異臭が鼻を突いた。いやな予感しかしない。

間取りは自分の部屋とはちょうど鏡写しのようになっていた。入ってすぐがキッチン。右側はトイレとバスルーム。キッチンの奥にダイニングがあり、二間続きで右側にもう一部屋。

右側の部屋に布団が敷いてあって、そこに人が寝ていた。初老の男性のようだが、“倒れている” どころかどう見ても亡くなっている。顔は土気色だし、呼吸をしている気配もない。

“なんで私が…”そう思いながら、119番通報した。

 

繋がったオペレーターに隣人が布団の中で亡くなっている旨を伝えると、

「脈を診てください」

とんでもないことを言われた。

「どう見ても死んでるし、無理」

「でも、脈を診てください」

確認しなければならないのは分かる。とはいえどう見ても亡くなっているのだ。遺体に触るのはどうにも気が引けるし、成り行き上関わってはいるが、本来自分は無関係なのだ。

「おばちゃん、診てよ。私電話してるし」

おばちゃんが手首を触った。

「いやー! 冷たい。分からない~」

“ほら、死んでる。脈を診たようには見えなかったけど…”

「分からないって」

オペレーターに伝えた。

「心臓マッサージはできますか?」

「いや、だから死んでるって!」

「脈を診てください」

なぜ執拗に脈を診させようとするのか全く意味が分からなかった。こちらの言うことが通じていないのだろうか。

Sさんはやむを得ず、脈を診ようと男性の袖を捲った。

男性の腕は、真っ黒に変色していた。

「ぎゃー!」

我慢の限界だった。部屋を飛び出し、駐車場まで逃げて、110番通報した。

 

ほどなくして警察が到着した。

なぜかSさんが第一発見者扱いをされ、状況説明を求められた。

“おばちゃんに聞いてよ…”

隣に立っているおばちゃんこそが遺体発見者だと言おうとした矢先、

「私も今来たばかりだからわかんな~い!」

おばちゃんの大きな声で気勢をそがれた。

“え、なに? このおばちゃん、ヤバい”

 

実は、通報してから警察が到着するまでのあいだ、Sさんはおばちゃんからこの日の経緯を聞いていた。

おばちゃんは昼頃、男性の様子を見に部屋を訪れた(どういう関係なのかは聞かなかった)。しかし寝ているようだったので、ダイニングで腰かけて男性が起きてくるのを待っていた。ところが、待っていてもなかなか起きてこない。起こそうと声をかけたら全く応答が無く、どうすればよいか分からなかったので隣の部屋へ助けを求めることにした。

これが実際のところだそうだ。

昼に来て夕方まで、あの悪臭のする部屋で、なぜ平気でいられたのか。待っている間は何をしていたのか。そもそも待つ必要があったのか。

これに加えて、先ほどの “今来たばかり” 宣言である。

おばちゃんの行動も言動も、Sさんの理解を超えている。これ以上関わるの危険な気がして、警察に対しては自分が男性の部屋に入ってからのありのままを話すに留めた。

 

そして、早々に引っ越したのだった。

 

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