対照的なノルディックウォーキングのフォームを考察してみた

先般参加した東海ノルディックウォーキング連絡協議会(津地区)の定例会において、気付かぬうちに助手と並んで歩いているところを撮影されていました。
これがなかなか対照的なフォームですので、若干の考察を添えて紹介したいと思います。

1.スタンダードなフォーム

後ろを歩く女の子は助手こと私の娘。非常にスタンダードなフォームのノルディックウォーキングです。

肩からポールの先までが一直線で、美しいですね。腕を後ろまで充分に振れています。ポールを突く位置も、体幹の前傾も申し分ないです。
肩関節の内旋が生じていないところも良いです。肩関節が内旋して手のひらが空を向くような押し方をすると、いわゆる「巻き肩」の状態になり、腕を力強く後方へスウィングできませんし、見た目の印象も悪くなってしまいます。

体幹を回旋するまでには至っていませんが、そこまでしなければならない強度の歩行ではないので評価はできません。

自分の娘だからと贔屓目に見ている分を差し引いても、下手なインストラクターより美しいフォームで歩けていると感じます。

こんなに上手いこと、誰が教えたんやろ?

2.独特なフォーム

次は前を歩く中年男性。私です。

先に言い訳をしておきますが、娘に合わせて自分に快適なスピードよりも幾分落としています。したがって、体幹の前傾はほとんど見られませんし、ポールも腰よりほんの少し後ろまでしか押していません。速度を落とした分だけ歩幅が狭くなり、腕の前方へのスウィングも小さくなり、その割にポールが長いので、突く位置が通常より後方になっています。

これらを踏まえても、ベアフットシューズ着用によるノルディックウォーキングに特徴的なフォームや、独特の癖が見て取れます。

(1)ベアフットノルディックウォーキング

ノルディックウォーキングに限らず、ベアフットシューズを着用した時に顕著に現れる特徴は、歩幅が狭くなることです。
歩行も走行も「踵接地」が基本のところ、ベアフットシューズを着用すると前足部あるいは足裏全体での着地になります。通常ならば踵でドンと着地する手前に、前足部あるいは足裏全体でフワッと着地するので、その分狭くなるのです。
通常のウォーキングならばここまでなのですが、ノルディックウォーキングは下肢だけでなく、上肢(ポール)でも推進力を得ているのが困ったところ。
ポールでしっかり押したいのなら、押した分の歩幅は稼がなくてはなりません。
これを賄うのが、体幹の回旋です。足が出ない分、腰を切って歩幅を稼ぐというわけ。
大した速度ではないにもかかわらず、画像において骨盤の右前方への回旋がみられるのはこのためです。

余談ですが、ポールを押し切ってさらに速く歩くとなれば、骨盤の回旋では賄えなくなります。後方へのスウィングを完結させるために少し短いポールを使い、ピッチを上げることになるでしょう。
長いポールを使うことに意義を感じるのであれば、足の接地を意図的に遅らせることになるかもしれません。通常の歩行における下肢の前方振り出し→膝の完全伸展→踵接地のところで、足を下ろさず「空振り」させて、前足部あるいは足裏全体で着地するのです。ポールがあるからこそ可能な歩き方ですね。(なお、一般的なベアフットウォーキングでは、脚を振り出すことも膝が完全伸展することもありません。)
ピッチを上げるか空振りさせるか、どちらが正解かは分かりません。私に限って言えば、以前は後者、今は前者の歩き方です。

(2)ポールのハの字具合の理由

娘の上肢が真っ直ぐの軌道でスウィングされるのに比べ、私の場合は肘で動作を先導しながら外側に弧を描いて腕をスウィングしています。ポールを突く位置もやや外側。
このときの後ろから見たポールの角度は、前方で突いたときには「ハの字」で、身体の側面を拳が通る際には「真っ直ぐ」になり、後方へ押し切っていくにしたがって再び「ハの字」になってきます。
もちろん理想的なフォームではありません。前方へのスウィング局面では、体幹の回旋につられて腕も内方へ振られてしまっていると思われます。「にゃんにゃん走り」状態ですね。
しかし後方へスウィングに関しては、合理的な理由があるのです。

それは、広背筋を動員しやすいため。

背中の最も大きい筋肉である広背筋には、肩関節を伸展(腕を後方へスウィング)する作用があります。ノルディックウォーキング初心者の場合、この広背筋を上手く動員することができず、上腕三頭筋(振りそでの筋肉)ばかり疲労してしまうことが多いです。
スウィング動作において広背筋を動員するためには、筋肉の形や働きから考えて、肘が身体の真横にある位置では脇をやや開き、肘が身体の後方へ行くにしたがって内側に絞られていく軌道を描くと収縮を意識しやすいはずです。最終域では肩甲骨が内転(内側に寄せる動き)をします。ウェイトトレーニング愛好家ならば常識とも言える動きです。
広背筋を動員させることができているので、肩甲骨が内転し、上半身も回旋しているのです。

この軌道で動かすと、真っ直ぐなスウィングと比べて、初心者にありがちなエラーである「後方域での僧帽筋上部の過緊張(肩をすくめる動き)」も少なくできる印象です。歩きながら修正するのは私の技量では難しいので、指導時にはウェイトトレーニングを利用しています。広背筋を動員することに慣れたら、真っ直ぐな軌道のスウィングへ徐々に戻していくことになります。「お前はできてへんやんけ!」と、責めないでくださいね。

3.まとめ

私の場合、指導する時は意識しているので出てはいないと思いますが、体幹の回旋に腕がつられてくることに加え、ベアフットシューズを履いて歩くことと、ウェイトトレーニングを含めて広背筋を意識すること(弧を描く軌道)が習慣化しているので、気を抜いていると写真のようなフォームになってしまうようです。

そして、普通に歩いている時は娘のほうが美しいフォームであること。これはもう、間違いないですね。

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